正しい着地で故障しにくいランニングフォームを身に着ける
ランニング、ジョギングにおいて多い悩みが「着地点」の意識でしょう。
筆者も回内足でシンスプリントになりやすいので、着地についてとにかくこだわる時期がありました。
ただ、マラソンのタイム向上、ランニングフォームの適正化を狙うのであれば、着地を意識しすぎることは一概に「正解」だとも言いづらい部分がありますよ。
二軸走行・一軸走行に対する誤解
『忍者走りのランニングフォームが話題になっているのはなぜか』でも取り上げた「忍者走り」での、スズキ浜松アスリートクラブの二人の選手の走り方が話題になりました。
いわゆる「忍者走り」という独特の走り方をする安藤選手と清田選手ですが、この二人がなぜあまり腕振りをしていないように見えるかというのは、「上半身の脱力」にあるのです。
ちなみにこの二人の走り方を見ると、上半身の脱力と同時に大きな上半身の捻りが目立たない「二軸走法」だともいえます。
この「二軸走法」の利点としては、エネルギーを多く使わない、故障が減るというメリットがあるようです。
では「一軸走法」はどうかというと、上半身の捻りと骨盤の連動で大きなストライドを生み、モデル歩きの曲線のように大きな歩幅を生むことがメリットとされます。
ただしこの2つの走法についてしばしば雑誌で取り上げられますが、この「二軸走法」と「一軸走法」を意識すること自体を「着地の意識」と置き換えてしまうランナーがかなり多く見られます。
この2つの着地点は皇居ランスタイルでも何度も取り上げているように、結果論にすぎないことです。
では、この「一軸走法」と「二軸走法」、そして「着地を意識しすぎることが間違い」というのはどういう点なのでしょうか?
独断?ピッチ走法とストライド走法に隠された着地点との因果関係
この「一軸走法」と「二軸走法」の点だけでいえば、ピッチ走法とストライド走法との因果関係につながります。
たとえば女子選手に多いのは、ケイデンスがとてつもなく速いピッチ走法の選手が多く、清田選手や安藤選手はそのお手本のような走りです。
対して、ケニア選手に多いのが「一軸走法」と言われるストライドが大きく、とにかく推進力を大きく得ようとするフォームです。
どちらも一長一短あり、どちらが良いかは実は骨格や上半身の筋力などにも依存していきます。
たとえば筆者はストライドが大きく、駅伝からハーフマラソンまでは完歩の大きさをメリットに地面からの反発を利用しています。
よくよく自分の着地を観察してみると、いわゆる「一軸走法」に近いでしょう。
ただこれにはデメリットもあり、故障を誘発しやすいということと、長距離ではエネルギーロスが多いという点があります。
もちろん、一軸走法でもピッチ走法でエネルギーロスが少ないランナーも多いですが、ピッチが速いということは上半身の捻りを最大限に利用するというよりは、肩甲骨と骨盤の連動を早めて、一完歩ごとの反発を省エネで地面から得る走法です。
ピッチ走法の場合は、どちらかといえば「二軸走法」をする選手が多いというのが独断です。(見るはプロ、走るは三流の意見なのでご参考までに)
要は、以下のことが言えるわけです。
- 一軸走法か二軸走法かはフォーム作りの目的ではなく結果
- ストライドとピッチの因果関係により、着地点は個人で変わる
- 一軸走法か二軸走法かにこだわり着地を意識しすぎるのは、解法の起点に間違いがあり
- 結果的に腕が振られるのと一緒で、着地も上半身から骨盤、膝上の動き次第で大きく変わる
よく雑誌で「二軸走法」「一軸走法」の着地点に対しての議論がなされますが、着地は骨格によるフォーム、また筋力や体型によって大きく異なるものです。
まず意識すべきは着地点よりも「上半身」ということは、改めて申し上げたい部分でもあります。
「かかと着地」が理想なのは嘘!? 非効率で膝の故障も…?
最近、よくキュレーションメディアで「ダイエットにはランニングがいい。そして、痩せるためには“かかと着地”が理想です」という内容の記事が載っていて、「安易にかかと着地を勧めたらあかんで!」と、心の中で警鐘を鳴らしていた筆者です。
ただ、心の中だと皆様に伝わるものも伝わらない。
決して、“かかと着地”がダメなわけではありません。
ただ、“あえてかかと着地を意識して走ること”は、ランニングフォームでは非効率なことだというのが私見なんです。
また、“フォアフット”だろうが、“ミッドフット”だろうが、“ヒールストライク”だろうが、着地の箇所はどうでもいいというのも持論。
ただし繰り返すようですが、“かかと着地の推奨”には違和感を覚えざるをえませんので、そちらについて触れさせていただきます。
かかと着地」が非効率なワケ!動画でまずはヒールストライクをチェック
ややオーバーにはなりましたが、このかかと着地でのフォームは走る効率が悪くなります。
元のフォームが良いとはいえないのですが、そちらはご容赦くださいね。
上記がかかと着地で走った際のフォームです。矢印の肩の部分は力が入ってしまい、腰まわりの回転もできていなく、骨盤が後傾しやすくなってしまいます。
骨盤が後傾すると、走る上で上半身をうまく使えません。なので、ひざ上の筋肉に負担がいき、膝痛の大きな原因になる可能性すらあるんです。
あくまで“筆者がかかと着地をした際の感じ方”なので、全ての人に当てはまるわけではありませんが、少なくとも筆者は“かかと着地”で走りに精彩をかくことが多いと感じました。
メリットといえば、スピードが上がらないので、ゆっくりジョグをするのにはいいのかな?といった点です。
ただしこれはフォームを崩す元だとも考えていて、ゆっくりのジョグでもピッチやストライドのリズムは、本来の走りと同じであるべきだというのも持論です。
これは、膝の溜めなどでうまく調整することができるんですが、個人個人の体感によって説明の仕方が変わってきますので、“膝の溜め”については別の機会でご説明しようと思っています。
かかと着地をやめて「骨盤前傾」で走った時のランニングフォームはこちら
かかと着地だと、どうしても“カクカクカク”といった上下のエネルギー運動で、前へ進むエネルギーが殺されがちです。
ただ、骨盤を前傾させて、上半身のリズムを重視した走りだと、“スイーッと”前に進む感じです。
丸をつけた部分を見ていただきたいのですが、お腹周りをドローインする感覚だと、骨盤が自然と前傾して着地がミッドフット気味になります。
着地に関してましては、あまり接地の箇所を意識することはありません。結果的にミッドフットからフォアフットになり、こちらの方が脚へのダメージも少なく、前へ自然とエネルギー運動が起こることができますよ。
また、骨盤を前傾させて走ると、肘が自然と引けて、肩甲骨もしっかりと動きます。
なので、上半身主導で走ることができ、全身を使った着地になるので、脚への負担も減るんですね。
上下のムダな動きもなくなるので、膝周辺の筋肉へのダメージも軽減します。
実業団の方を例に出すと(恐れ多いですが)、佐川急便の山本亮選手のように、ヒールストライクでもとてつもなく速い選手も多いです。
ただ、これは結果的に骨格がヒールストライクの方が速く走れるようになっているわけであって、決して意識して“かかと着地をする”というのは、筆者個人の意見としては「ちゃうやろ?」と思うわけなんですね。
ランニングフォームというのは、100人のランナーがいれば100通りあるともいわれます。しかしながら、「答え」はないものの、「共通点」はあるんじゃないでしょうか?
筆者は今でも非効率なランニングフォームですが、過去はもっと悲惨なものでした。
練習量も大事ですが、ランニングフォームを改善するといったアプローチも記録向上への近道なはずですよ。
日々のジョギングで自分との体と対話を繰り返して、日々ランニングフォームを改善していく楽しみ。
ランニングの正しい着地まとめ
実は筆者はそれほど「二軸走法」や「一軸走法」に関して意識がなく、その点でシンスプリントの故障などを起こしてしまう原因になっていたと思っていました。
しかしながら、実はランニング故障の多くが「上半身の乱れ」や「脚を振り出す起点の乱れ」から起こることが多いです。
上半身への意識、骨盤との連動、そして内転筋をいかに使えるか。そしてスズキ浜松アスリートクラブの選手のように、いかに上半身を脱力することができるかが大事であり、着地点は結果論にしかすぎない、というのが持論です。
着地点を意識しすぎて練習を続けるのは、リリースポイントを無視してボールの捻りだけを意識して「手投げ」になっている野球のピッチャーと同様です。
まずはランニングフォームの根本部分を意識しつつ、日ごろのジョグを大事にしませんか?