なぜランナーはマラソンでオーバーペースになるか
マラソンの大失敗の例でも“大多数の理由”を占めるのが「オーバーペース」でしょう。
エリートランナーこそ「ネガティブスプリット」という、後半のラップの方が速いタイムを意識しますが、多くの市民ランナーはよくてイーブンペース、ほとんどが「ポジティブスプリット」です。
実はこの、2つのラップの「意味」そのものに、オーバーペースになりやすい原因が隠されています。
オーバーペースになりやすい原因と関連について説明します。
サブスリーを目指すランナーが陥る魔の「オーバーペース」
サブスリーを目指す多くのランナーで、壁にぶちあたっているランナーも多いことでしょう。
筆者は2017年はトラブルでベストなレースが一つもなく、駅伝に出ることもかなわない状況ですが、体がよくなればまたサブスリーを目指したいという思いは変わりません。
サブスリーの設定タイムに関しては、多くのランナーが「サブスリー未遂」を恐れて、4分15秒/kmよりもやや速いペースを刻みます。
4分10秒/kmを刻むことができれば、後半に多少の失速があってもリカバリーしやすいという「安心感」が、ランナーのオーバーペースになってしまいます。
たとえば、30km走の練習ではキロ4分ジャストで刻めても、フルマラソンになれば30km以降がボロボロなんてランナーも多いでしょう。
そもそもが「オーバーペース」であることを認識できないことに関しては、各々のスピード・スタミナの持ち具合と同時に、レースに対しての意識が“強すぎる”ことで起こりうるわけなんです。
イーブンペースでの消化不良感こそ「ベストレース」?
フルマラソンをイーブンペースで走りきることができると、完走した後のダメージも楽ですし、「もっともっとやれたはず!」という思いになることもあります。
場合によっては「ネガティブスプリット」を刻むランナーも多いでしょうが、こういうときに多くのランナーは「欲」が出てしまいます。
「前半、抑えすぎたかな?」
「前半にもっとペースを上げていたら、もっと早いタイムでゴールできていたかも……」
そんな意識は、特にダメージの少ないイーブンペースやネガティブスプリットで持ってしまうことも多いですが、これはむしろレースとしては「いい展開」なんだろうと筆者は考えています。
イーブンペースでは体のダメージが少ないことで「疲労感」があまり残らないのですが、これが多少のフォームの違い、多少のペースの狂いで「体中が痙攣した」なんてことにもなりかねません。
多くが「消化不良」を感じるのは、そのレースに対しての「モチベーションの強さ」に関連があります。
たとえば、1年に一度の大勝負レースでは、「安全な走り方をしたい」という心理がありつつも「目標以上のペースやタイムで完走してやる」という強い思いが潜在意識にあることもめずらしくありません。
その強い思いと、実際の走力でのミスマッチが起こりうることも多いので、実はイーブンペースで走りきったことというのは、単に「自分の理想」との乖離でしかないことも多々あるわけです。
マラソンでの目標タイムの指標は「3つ」用意せよ
いくらピーキングで合わせていっても、走っているときに不調が襲ってくることもあります。
逆に言えば、直前の故障がありながらも「不安」が強いまま走ったら、思いの外走れたなんてことも多いでしょう。
そもそもマラソンも人生も、自分の思ったような決着になることは希有です。
なので、目標タイムは「調子が悪い時」、「いつもどおりの時」、「調子の良いとき」の3パターンを予め用意しておくことも大事だといえます。
想定しているペースやレース展開が多ければ、多少のトラブルがあってもリカバリーしやすいことがあります。
たとえば、サブスリーを目指していたレースで突然、お腹が痛くなった場合。これを「調子の悪い時」としたケースを想定していない場合は、サブスリーのペーサーに抜かれた瞬間に「目標」を見失います。
不思議なもので、仕事でもマラソンでも「目標」というものが手からこぼれ落ちそうになると、脳が「もう無理だよ」と体中に伝えることもありえます。
そうならないためにも、「調子の悪い時はどうリカバリーするか」も事前に考えておいた方がよいでしょう。
無論、「いつもどおりの時」でも平常心を保ちながら淡々とペースを刻むということが大事です。要は、“欲張らない”という意識を持ち、42.195kmの長丁場を刻んでいく意識が大事です。
この“欲張らない”という意識は、特に「調子の良い時」に注意したいですよね。
最初は驚くほど足が軽く、まるで空でも飛んでいるように滑走できる日は、ラップタイムも目標以上のペースで刻むことが出来ます。
これが最後までハマれば「大幅なPB更新」となりますが、世間とマラソンはそう甘いものではありません。
待っているのは、「後半の泥沼地獄」というレース展開を経験したランナーは、全ランナー人口のどれほどをしめるのでしょうか。
オーバーペースまとめ
そんな筆者も「成功したフルマラソンレース」は片手で数えれば事足りるレベルです。
練習量や練習内容も大事ですが、いかに自分の目標に近づけることができるか、いかにその目標と乖離しすぎないかも日頃から意識してみてはいかがでしょうか。
「オーバーペース症候群」から開放されたいですね。
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